4番ウッドに“バッフィ”という呼名がついた由来で有力なのが、「buff(靴や床などを革で擦る)」からきたという説だ。フェアウェイウッドの打ち方は「芝を擦るように打つ」というセオリーが今も根強く残っていることからすると、この打ち方の“王道”を名に冠したバッフィがフェアウェイウッドの配列から除外される憂き目に遭っているのは何とも理不尽な気がするではないか。
そもそも、4番ウッドがキャディバッグから消えた歴史的な理由は2つ。
ひとつは、ドライバーの飛距離が飛躍的に伸びた結果、3W、4W、5Wから一本抜き、スコアメイクのためにウェッジを増やそうという流れから4Wを“間引いた”というもの。もう1つは、UT(ユーティリティ)やショートウッドといった距離が出る簡単なクラブが開発されたのに伴って、難しさが残る旧来のフェアウェイウッドを敬遠する流れが生まれ、やはり間の4Wが抜かれたもの。
要するに、飛距離や諸々の事情により3W、4W、5Wの3兄弟の中から「間(あいだ)」にいた次男の4Wが養子に出されたようなもので、機能的に劣っていたり際立って難しいからゴルファーから敬遠されたわけでもないのに除かれたというのだから極めて同情に値する。
さて、本題に入ろう。
昨今、この4Wがにわかに注目を浴びるようになったのは米ツアーのプロのセッティングが発端になっている。例えば、5年ほど前に、ジェイソン・デイは1Wと3Wのウッド2本態勢でシーズンに臨んだのだが、この時の3Wのロフト角が問題なのだ。従来の3Wのロフト角は15度だが、この時のジェイソン・デイの3Wのロフトは16.5度だった。えぇ~、これって4Wのロフトじゃん、と驚いたことを思い出すが、この「16.5度」のフェアウェイウッドが今や米ツアーでは見過ごせない存在になっているらしい。
そこでだ。
プロはメーカーが専用クラブを作ってくれるので16.5度の3Wの表示で使うことが可能だが、そういうものは中々一般には出回らないので、本来の16.5度の最新4Wがアマチュアにも使えるのか検証してみよう。
検証に使用したクラブは「3番ウッドの飛び」と「5番ウッドの高さ」を目指し設計した「カムイXP-03」のヘッドに「デラマックス05 FW」のシャフトを装着した4W、ジャスティック プロシード・ダブル-R カスタム。
これを森山錬プロに試打してもらい、今後、4番ウッドの復権は実現するのかを検証した。
この日、森山プロが出した最良データは以下の通り。
ボールスピード:65m/s 打ち出し角:12.1度 スピン量:2189rpm キャリー:250ヤード トータル:274ヤード 弾道:ストレート
トータル274ヤードはちょっとすごすぎるが、プロにとっても3番ウッドなみに飛んで、球の高さも出ているという結果となった。
「3番ウッドや5番ウッドと比べたときに、キャリーで飛距離が出せて、球も高いというのが4番ウッドの最大のメリットなんです。アマチュアの方でも残り200ヤードからグリーンまで届くし、そして落ちてから止まる球が打ちやすいと思います」(森山プロ:以下同)。
アマチュアが4Wを入れるべきかの判断ポイントは、「キャリー200ヤード」近くを“高確率”で打てるか。そして、3番ウッドよりもやさしくて球を拾いやすく、5番ウッドより飛ぶという4番ウッドの特徴がここで生きてくる。
性能的に3番ウッドと5番ウッドの中間で、いいとこ取り的な性能のある4番ウッドは、これを入れることで3番と5番を“抜くことができる”というメリットもある。クラブを1本浮かせることで、ウェッジ類を充実させたり、エクストラクラブを入れたりと、戦略に応じたクラブセッティングが可能になるのだ。4番ウッドの下は7番ウッドを入れるなり、UTにつなぐなり、その選択肢も広がる。
今年あたり、アマチュアのバッグの中身は、1W、4Wのウッド2本という見ためにスッキリと粋なセッティングが流行るかもしれない。